不動産の証券化(流動化)は般的な取引形態である。一般にはあまり知られていないが、大都市の目抜き通りにあるAクラスビルの数多くが証券化されている。
例えば、大阪の代表的なビルである大阪市北区の「阪急グランドビル」や、大阪市中央区のOBP(大阪ビジネスパーク)にある「ツイン21」も2002年に証券化された。
関西圏で実施されたビル、ホテル、ショッピングセンター等の証券化事例は、公表ベースだけですでに20件以上ある。
6つの不動産投信(J-REIT)に組み入れられている関西圏の物件は15棟で、全国の約1割を占める(関東のおおむね8分の1)。
正確な市場規模データはないが、国土交通省による2001年度の全国不動産証券化対象不動産の額は約3兆円、2002年度比59%増と伸張著しい。
2002年度は数字が未公表であるが、同等以上の証券化が見込まれる。J-REITの対象不動産の額(取得価格ベース)は約7000億円と1年前の倍に拡大しており、2003年度も既に3つのファンドの組成・上場が見込まれている。
不動産証券化の歴史はまだ10年足らずと浅いが、不動産市場と資本市場を結びつける金融手法として広く認知され、リスクマネーを不動産市場に呼び込む上で重要な役割を果たしている。
オリジネーター(原資産保有者)にとっての証券化の機能(動機)は、資金調達とリスクの移転にある。一方、投資家は資金運用先として不動産を選択し投資する。証券化はその橋渡しのツールだ。投資家は証券化により不動産リスクを一部保有し、不動産が生み出す将来キャッシュフローを受け取る権利を買う。従って「不動産」そのものではなく、収益事業としてのリスク・リターンが重要だ。
通常の不動産売買の買手は物件を丸ごと購入するが、証券化における投資家は不動産に係るリスクを一部負担する代わりに、運用成果としてのリターンを受け取る。よって特別な意図(地震リスク・マーケットリスクの分散等)がある場合を除き物件の立地はさほど問題にはならない。こうして投資マネーは不動産マーケットの中で投資家の基準に合った物件に向かう。
不動産に投資しようとする投資家の目を引くには、投資基準に合ったオペレートができているか否かが極めて重要だ。
個々のビルで言えばオペレート(運営)が問題になるのであって、最後はビル間競争に帰着する。
関西では相対的な地盤沈下が叫ばれているが、不動産の分野でもいかに投資家の眼鏡にかなったオペレートができるかに浮沈がかかっていると言えよう。
関西圏の不動産証券化市場には“ウィンブルドン現象”のようなところがあり、大半のディールが東京の専門部隊によってアレンジされている。こうした実態を見れば、まずは関西のマーケットを良く知る自前の専門家を育成・確保することが課題とも言える。そして、個々のビルの実力を正しく投資家に評価してもらえる「質の高いオペレート」と、「リスク・アレンジメント」が不可欠の目標となるであろう。